トヨタ財団研究助成申請書  課題の所在と研究目的

日本の国土の70%が山地である。山村が疲弊している。若者に戻ってきて欲しい。国内の均衡ある発展が言われて久しいが、地方の人口減は地方消滅ともいわれ、その中でも山村は限界集落となり人口減の影響を最も大きく受けている。   

この研究はわらび粉生産とその採取地である山村の文化景観である中世以来の共有牧野の整備という研究を行い、牧場、牧野の再生による産業の再構築をする。さらにこの共有地の再活用を住民参画によって、共同体醸成をする。以上をこの研究の目的とし、物心両面にわたる山村に自立した社会保障の役割を探っていく。

この対象地は標高1500m、御嶽山の斜面に広がる260haのオバコ牧場で、標高1300mにある日和田集落から30分の距離にある。日和田集落は高山市から1時間の距離にある隔絶山村である。

杉山らは、大学、大学院 時代に」、宮本常一先生、川喜田二郎先生の指導、薫陶を得て、かつ安家プロジェクト岩手県岩泉町安家、北上プロジェクト岩手県遠野市附馬牛町の調査を行なった。いずれも山村であり、杉山の調査結果は筑波大学修士課程環境科学研究科修士論文にまとめられている。また、90日間をかけ原付に乗り3500kmを走破して西日本の山村においてワラビ粉生産と山村生活調査を行っている。  

飛騨地方のワラビ粉調査は、遠野市附馬牛町の調査で飢饉の時に救慌食として利用されたワラビ粉の生産力に注目して、実際ワラビ根採取を行っているフィールドを探し出した。そして5年に渡り飛騨地方のワラビ根堀の調査を行ない、1990年度   第4回 日本民具学会研究奨励賞受賞「ワラビの地下茎採取活動」(『民具マンスリー』第22巻7・8・9号、1989所収)にまとめた。しかしその後、生産者の跡継ぎがおらず、生産が途絶えてしまい、今、村人と共にワラビ粉生産の復活に乗り出している。

現在、現地のNPO法人に加わり、ワラビ粉生産を立ち上げ昨年10kgのワラビ粉を生産した。活性化の核にする試みである。このことは、『民具マンスリー』「実践民俗学 ー民俗文化復活の現代的意味ー」48巻5号に詳しい。ワラビ粉生産という農耕の起源の証左となる貴重な民俗は、伝統的価値の再評価に基づいた収益を生み、経済価値を生むのである。

(研究の目的)

1.本研究では提案した新産業であるワラビ粉生産の会社は、村民の雇用と新しい文化の再生をもたらし、村落共同体を強固にし、若者の関心を引きつけ参入を促している。ワラビ粉販売等の利潤を積み立てし、牧場開発や水車小屋、堆肥、その他の共用に供するよう方策を定めていく。

2. 牧場の整備は、中世以来の木曽駒と牧場との草地をめぐるエコシステムを応用した文化景観の再生により、飛騨牛とわらび粉などの生産を可能にするものであると同時にワラビ摘み、蜂蜜採取、薬草採取などの利用を通して草原や森林の山地利用を可能にさせる。

3.野草と牧草、ワラビを混播した植生の牧場の整備の研究は、良質のわらび粉と中世からの飼養方法に基づく良質の肉牛をもたらし、野草主体の伝統的な牧場の継続と牧草を混播するという新しいタイプの牧場の活用であり、牧場に新たな価値を生む。わらび粉生産による和菓子販売と飛騨牛の肉販売の両者を通してその価値は社会に共有される動機とする。

4.この調査研究の成果を生かし、山村生活にわたる環境・歴史・民俗などとともにこれらを生かした若者が取り組める施策の研究活動や生産試行の動きなども広報を行い山村振興研究所を設立したい。この研究所の生産的、社会的活動は、山村の地域社会に共有され、新たな文化という価値軸を付け加える創出活動の拠点となるように設立に向け高山市市への働きかけをする。