実践民俗学6  生物多様性から見た山村振興

 

牛はわらびを嫌う。放牧地はわらびばかりになる。これを利用して山村振興をはかる。今西錦司博士は、『山岳省察』の中で岐阜県高山市高根町日和田で見た牛とわらびと人間の関係について記載している。「        」

伝統的放牧地には生物多様性にある生物間の生態学的有機的つながりの結束度において、人間ー植物(わらび)ー動物(家畜〕関係の3者は濃密な相互依存がある。これを利用する。 わらびにとっては、牛が捕食を嫌うため繁殖を広げ、また、牛がわらび以外の競争種を捕食するため優先種となりえる。

牛にとっては、わらびが増えていくことは厄介であるが人間が定期的に採取という駆除を行いわらびが復元する10年間は野草が食べられる。 人間はわらび根を繁殖部を残して掘り取ることによってわらびが増加し、優占種となり得たわらびのわらび粉と飛騨牛を同時に得ることができる。生物多様性の経済が保証される。

新しい放牧地では、芝と牧草種(要検討)とわらびを増やし、わらび粉生産と牛放牧を共存させても効率を邪魔せず、放牧してもわらび粉生産の余地が残るようにする。効率的放牧と相反する伝統的放牧を共存させることによって単独の収支より複合の収支の方が収益があげり、生物多様性の経済性の側面が保証される。日本の農耕の起源を示唆するわらびの根堀の伝統的生産の文化が守られる。

 

 

事業の目的

草原は絶滅危惧種が最も多い。草原の生物多様性をはかる施策が急がれる。火入れや家畜の喫食により草原生態系を維持し生物多様性をはかる必要性がある

本申請は、1000年の歴史ある中世からの草原である放牧地を生物資源管理して草原生態系を維持することによって経済的価値を追求し、生物資源の利用の促進を通して生物多様性をはかるものである。生態系サービスの回復の在来知であるわらび粉生産の復活や牛放牧や草木を増加させることによって草原の生物資源の生物多様性を図り、同時に、産業の振興という生活基盤の安定化によって山村の危機を救うねらいがある。

対象となるオバコ牧場は260haの森林になっている。生態系の多様性確保と種の多様性の両者を図るために、ここに森林と草原を作り出して生物多様性をはかる。森林には有用樹を植林し種を増やし、草原は火入れなどによって、生物管理により自然植生の豊かな植相を作り出し、わらびや飛騨牛をはじめとする多種多様な種を育む。生物多様性による資源利用の経済性追求は、これらの種を利用した生態学的つながりに基づいた包括的伝統的生業計画により、春秋のわらび粉生産、飛騨牛放牧、そば、山菜、薬草、日本蜜蜂の蜂蜜採集栽培やゴバイシ、ヤシャブシなどの有用樹植林など、これらの生物多様性の保全による種の宝庫をもたらし、林野一体化利用によった、県民所得の向上をはかる地域振興策でもある。

○活動内容 草原は樹林地になっており平坦地である15haを草地につくるために重機や住民参画により林地伐採をして造成する。伐採跡地の春先火入れを行う。また周辺の林地を伐採し有用樹木を植林する。

全計画地15haのうちの1年度分4haの藪の伐採と重機を使った伐採を行なう。残りの11haは、初年度分の草地のわらび植生の復元状況を確認して、次年度の整備をおこなう。これらは生物多様性の資源確保するための草原の造成により、ここに、生物資源利用であるわらび根採取とわらび粉生産、有用樹の植林、蜂蜜採取、山菜採取農園の管理、薬草栽培の整備を展開する。対象地2haを4年計画で行う総事業費800万円の事業計画である。今回は、4年計画の1年目で200万円の事業費で4haを伐採する。翌年から数年間に渡りわらびなどの植生復元を確認した後、残りの11haの整備をお願いする.

○活動準備(広報計画、参加者の募集方法、作業委託方法など)参加者の募集は村内の共同経営者にお願いする。伐採、伐根の作業は村内の建設業者に請け負わせる。

○活動体制(指導者の配置)現場監督を置く

○安全対策(事前の安全確認、ヘルメットなど安全装置の着用、保険の加入など)現場の下見、ヘルメット着用、作業団体保険に入る

○事業目標(事業量、参加人数など)工期を1ヵ月半とし作業を地元建設会社にお願いする。260haの林地の平坦地15haのうちの初年度分4haの伐採を重機によって行なう。春先に火入れを行う。わらび植生復元具合を確認し、その後3年間で同様の整備を行なう

○事業効果(直接効果、波及効果)生物多様性を確保するために草原整備する。資源管理は火入れや家畜の喫食によりワラビ・シバ植生に遷移段階を抑える。種の増加は山菜、草木、日本ミツバチの増加、飛騨牛による芝の繁茂など生物種の増加が予想される。

波及効果はわらび粉生産を生物資源利用の基幹生業として拡大させる。雇用者は、4~5人の短期新規雇用を目指す。1ha当たり600kgのわらび粉産出が可能であるから、30日間でわらび粉100kgを生産することによって一人当たり年間30万~50万の収入増をはかる計画である。冬場の仕事としてわらび縄製縄者に対しては5000円前後の日当を支払う。

補助終了後の事業継続はわらび粉事業の収益にたよる。これを用いてさらに草原を拡大する。草原や有用樹林を広げることにより生物多様性を一層拡充し、さらに資源利用を図るものである。生物資源を利用した経済性追及の生業は①わらび粉生産     江戸期以前から継承されている日本の農耕の起源を探る貴重な民俗である。一度途絶えた民俗を地域振興山村振興として復活させ、村落開発の中心に据えている。「飛騨わらび」という社団法人を起こし生産販売を行っている。この2haの草地をさらに拡大していきたい。②飛騨牛放牧    子牛を借り受け生産を行ない数頭を放牧する。芝やクローバーを捕食する。③蜂蜜採集   巣箱を置き、古代集蜜法により日本蜜蜂の蜂蜜を集める。④山菜摘み  初夏に村民、観光客を相手にわらび摘みなどを行なう。入場料を徴収する。⑤薬草栽培   ヤマゴボウなどの薬草を自然状態に近い形で育成させる。⑥有用樹植林  林地を伐採し漢方のキハダやわらび縄の染色原料の樹木である五倍子やヤシャブシの植林を行う⑦わらび縄を綯う会  澱粉加工の残渣であるわらびの地下茎の繊維から縄がなえる。澱粉加工の残渣であるわらびの地下茎の繊維から縄がなえる。水に強く丈夫なため古来から貴重であった。その製縄の技術が高根町日和田には残されている。日本で唯一である。御所などの文化財の神社仏閣の竹垣の結束に使われる。この技術を伝承するため若者を集めてわらび縄を綯う会を作る。植林された五倍子などの染色原料木によってわらび縄を染め樹林地の有効活用に繋げる。

草原や有用樹林を広げることにより生物多様性を一層拡充し、さらに資源利用を図る。タ対象地15haを4年計画で行う総事業費800万円の事業計画である。今回は、4年計画の1年目で200万円の事業費で4haを伐採する。翌年から数年間に渡りわらびなどの植生復元を確認した後、残りの11haの整備をお願いする。 昨年度はわらび粉を50kgを近隣の高山市営牧場で生産し、150万円の売り上げだった。しかし、わらび植生が足りない。この計画で補う。わらび粉生産は軌道に乗り収益が出ている。草地整備植生復元後は、年間100kgのわらび粉の生産をし、300~350万円の売り上げを計画している。これを財源として飛騨牛飼養、蜂蜜採取事業、山菜採取事業、薬草採取事業、有用樹の植林を行い更なる収益を図り、継続的に絶滅危惧種を減らし、生物多様性を図る。生物多様性が生み出した資源利用から生まれた高価値の産物を利用して山村のブランディングを行い、六次産業化と生物多様性の価値を高め、産業の振興を図る

生物多様性維持の努力は科学技術の集積である都市を支え、山村の脆弱性と都市の脆弱性を打破する。この取り組みは日本の山間地開発のモデルケースとなる。